カエデ自動機械

ちょっとしたものづくりや電子工作のメモなど。技術開発とは今は呼べないかな。

3Dプリンタを買った

前々から欲しいと思っていた3Dプリンタをついに買ってしまいました。
買ったのはFLASHFORGE社のAdventurer3Xという機種です。

決して安くはない買い物ですが、総じてコストパフォーマンスが高い、良い物であるという所感です。
軽く紹介なんぞをしようと思います。

なぜ今なのか、これまではどうしていたのか

いきなり会社の財務部門や事業管理部署が言いそうなセリフで頭やら胸やらが痛む気がしますが、これまではそんなに使っていなかったんですね。
ロボットを作る時は大体makeblockの部品を使っていて、何か特製のものが必要になった際は3Dプリンタを所有している友人に頼んだりしていました。


が、それほど頻繁には使わないと言いつつも、

  • 金属加工ほどの設備無しにそれなりに使える物が作れる
  • 純粋な機械設計、生産性を加味した設計等の知識なしにそれなりに使える物が作れる
  • 材料の状態での保管が楽
  • 製造中は放置できる

等、やはりホビーメイカーにとってはメリットが多いのも事実。


makeblockは部品単位の出荷をやめてキット販売に主眼を置くようになってしまったし、この間思い立って着手だけした自律ローバーを始め作りたいロボットが増え、友人にも流石に頼みずらい・・・寸法が間違っていても再出力を頼みづらいタイミングの時は一生懸命ヤスリで削ったりと面倒です。


造形受託サービスもDMM.makeを始めとして色々ありますが、やはりロボット一式分作るとなるとそれなりの部品点数になって結構な値段がするんですね。油断すると1、2回分で安い3Dプリンタが買えてしまうくらい。
こちらも友人に頼むのと同様、失敗を伴う試行錯誤をしづらいという難点がありますし、造形自体のノウハウを蓄積しづらいというのがあります。どうせなら、最新のプリンタの動向を肌で感じたい。


そこで購入に至りました。


私の3Dプリンタ経験

これは以前、3Dプリンタ活用技術者試験の話でも書いた気がしますが、
初めて見たのはちょうど10年くらい前で、大学の研究室に、大型冷蔵庫くらいのFDM式が置いてありました。(私が所属していたわけではない)
ちょっと事情があってアレコレと機械のモックを作らせてもらったのもいい思い出です。

次は6年前、職場でそれなりの値段がする卓上FDM式を見ました。
こちらは自分でも色々利用しましたが、あまりいい思い出はありません。ABSを使っていましたが、途中で反るか、もしくはプラットフォームへの定着が強すぎて剥がす時に壊れるかの2択で、ほとんどまともなものが作れないのです。


作りたいものを作る機械ではなく、この機械で作れるものを作るべき


という、本質的なのか、一周回って当たり前すぎて情報量ゼロなのか、なんとも言えない結論に至ったのを覚えています。



どの機種にするか

趣味に割ける予算は(一部の剛の者と比べなければ)決して少なくない方と自負がありますが、そうは言っても限界はあります。Markforged社のMarkTwoとかほしいですけど。

  • anycube mega s
  • flashforge adventurer3

あたりが、値段も手ごろで、ネット上で使用者も多いようなので悪くないのではという結論に至りました。

anycube mega s は造形温度が高いので使えるフィラメントの種類も多く、値段もより安いですが、本体サイズが少し大きく動作音もそれなりにするというネットの評判。

adventurer3は実物も見たことがありますが、本体サイズや動作音という観点ではこれ以上は無いのではというくらい良さそうです。カタログスペック大好きな私としては、使えるフィラメントの種類が少し減るのは残念ですが、それでもPLA、ABSを始めとして色々使えるフィラメントがあるようなので及第点としました。


1台目の私有3Dプリンタとしては、カタログスペックや価格よりも、トータルの手ごろ感を重視して、3Dプリンタを使い倒すという習慣を確立した方が良いだろうという考えで、Adventurer3を選定いたしました。


こちらであれば作業机の脇に置いても大して邪魔にならないし、不具合の確率も低そうです。
不具合をアレコレ直したり自分でカスタムしたりというのも好きなのですが、平日夜と土日しか趣味の時間は取れないので、今はそこに時間を取られたくありません。

というわけでAdventurer3に決定しました。。。。と言いたいところですが、
購入直前、Adventurer3Xという派生機種(?)があることを知り、2年間のサポート(無印は1年間)と金属プリント対応(私には所要は無いですが・・・)というのに惹かれ、こちらを購入するに至りました。


届いた

注文して割とすぐに届きました。国内正規代理店があるとその点は安心ですね。国内在庫自体を持っているのかは知りませんが、中国から直接DHLとかで送ってこられると、こちとら早く使ってみたいのに時間がかかってやきもきしてしまいます。

余談ですが私は巷でよくあるガジェットの開封動画がそこまで好みではない(開梱だけ見せられても困るし、動作確認は公式webサイトで見られるし)のですが、実際に届いた時のワクワク感は、開封動画の1本や2本作らないと収まらない気も致しました。


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届いた箱。さすがに大きい。

箱を開けると附属品・消耗品類が入っています。PLAフィラメント(グレー)500g、FLASHFORGE社特有の曲がるプラットフォームの他、Adventurer3X特有と思われる附属品としては0.3mmノズル、カーボンプラットフォーム用と思われる造形物定着用ノリ等が入っていました。

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本体。これで500gのフィラメントスプールが機体に格納されるというのだから、相当コンパクト。横に置いたのはサイズ比較用のティッシュ

写真に写っている造形ヘッドを固定しているスポンジだけはどう頑張っても外すことができませんでした。非通電時なら手でヘッドが動かせるのではと思っても固くて動かず。
スポンジを奥に押し込んでヘッドの上を回り込むようにすれば外せるのではないかと思い、実際そうやって外している方もyoutubeでお見掛けしたのですが、どうもうまくいく気がせず・・・

結局、電源を入れてマニュアルで造形ヘッドを上方に動かすことで、なんとか外すことができました。電源を入れた瞬間に造形ヘッドが縦横無尽に動き出さないかちょっとした賭けでしたが、上手くいきました。
マニュアルに従って造形ヘッドとプリントプラットフォームの高さ調節を行い、設営完了です。
使ったことある機種はセットアップが面倒なものばかりで大変でしたので、数十分でセットアップが完了する事実には感激いたしました。


テスト造形をしてみる

とりあえず、機体のストレージに格納されたW20*D20*H10の直方体を出力してみました。
使用したのは附属していたPLAフィラメント、プリント設定はデフォルト(ノズル温度210℃、プラットフォーム温度50℃等)です。
造形中の音はかなり静かで、作業場所のすぐ隣に置いておいても気になりません。ただ、扉一枚隔てた廊下でも動作音自体は聞こえてきますので、作業部屋の隣に寝室があるような場合、人によっては気になるかもしれません。

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テスト出力結果

何の面白みも無い出力ですが、とにかく上手く出力ができました。
造形プラットフォームから造形物を剥がす時も、プラットフォーム自体を2、3回湾曲させれば概ね接着面が剥がれますので、あとは手で引きはがすだけで簡単に外れます。


同じものを2ショット出力しましたところ、実測寸法(デジタルノギスを用いて測定)は以下のようになり、概ね正確であるようです。

項目 1ショット目 2ショット目
実測幅 20.17 20.30
実測奥行き 20.30 20.28
実測高さ 10.01 9.98

ただ、微妙に角の部分が膨らんでいるような、XY方向が波打っているような、、、と細かい造形精度の低さは目視や手触りで確認できるますし、ノギスを当てる位置によって寸法は若干異なります。
100分の1ミリの精度が求められるような場面、精密な嵌め合いが必要な部分には使えないかもしれませんが、ちょっとしたモータやセンサのマウントを作ったりするには十分ではないかと思います。

150mm*150mm*150mmまで造形が可能ですので、それに収まるサイズはもちろんのこと、分割造形・組立を横着しなければもっと大きなものも作れるかと思います。

まとめ

  • すぐ届いて、すぐ使える
  • 小型で置き場所の制約が少ない
  • 動作音は比較的静かだと思うが、扉一枚隔てた隣の部屋くらいでも聞こえるは聞こえる。
  • 造形精度は良い気がするけど、当然ながら限界はある。
  • 10万円以下、無印Adventurer3なら7万円でこれは安くて良いものに思える
  • 無印Adventurer3との違いはまだわからない。

色々作りたいものを作ってから、レビュー第2弾のようなものも書きたいと思います。