タイトルの通りです。
レビューと言うほどの記事ではないです。細かいことは別記事にするかも。
決心まで
今までの機種
FlashForge社のAdventurer3Xを使っていました。
flashforge.co.jp
ktd-prototype.hatenablog.com
選んだ理由は割とみんな使ってそうで情報も多そうだしコンパクトで良さそうだったから。
職場の人(熱心なMakerはそう多くないけど)も使ってるし、ついったにもユーザーがたくさんいるし。初心者向けなんだろうなと。
ちょうど1年間、多分総プリント時間は400時間くらいかな?
ものすごいヘビーユーザーというほどでもないけど、今まで作ったロボットの部品は殆どコイツで出力したような気がします。
買い替えの理由
まあ理由として大きかった順にまとめると以下になりますかね。
- 造形可能な材料の幅広さ
- 造形サイズの大きさ
- 外観がかっこうよかった
最初の2点は用途次第、最後は好みなので、絶対的にPrusaが優れた3Dプリンタということはないと思います。なんならAdventurer3Xの方がおすすめです。
結構最近まで存在すら知らなかったんですが、職場の人(先述の人とは別)がこの機種を使っていると教えてくれたんですよね。調べてみたら世界で一番売れた3Dプリンタ?っぽいじゃないですか。
www.prusa3d.jp
それは別に良いんですけど、造形可能サイズと使用可能材料の幅広さが魅力的でした。
Adventurer3Xは基本的にはPLAやABSなどの定番の素材を使って小物を作ることを想定しているようです。
そもそもデカいものをわざわざ3Dプリンタで作るなよっていう話でもあります。
ただ、込み入ったロボットを作ろうとすると、ノズル温度を上げてポリカーボネートを使いたいとか、ノズルを表面硬化スチール製に替えてカーボン入り素材を使いたいとか、変な欲望が出てきます。
次に作りたいロボットが脚車輪式の倒立振子で、脚のパーツを一体成型するにはもうちょっと大きい造形サイズが欲しいというのもありました。
あとは外観が好きでした。
オープンフレーム式(というのかな)はメカメカしていて良いし、橙と黒のツートンカラーも良い。
比較表的な
(実際は色々な差異がありますが、自分が気になったポイントだけです)
項目 | Adventurer3X | Prusa i3 MK3S+ | 備考 |
本体サイズ(幅×奥×高) | 388×340×405mm | 500×550×400mm | Prusaはフィラメントホルダ含まない |
造形サイズ(幅×奥×高) | 150×150×150mm | 250×210×210 | - |
ノズル温度 | 240℃ | 300℃ | - |
ヒートベッド温度 | 100℃ | 120℃ | - |
使用可能材料 | PLA、ABS、PETG、金属etc | PLA、ABS、PETG、Flex、PA、PC、Carbon入り素材etc | 金属は法人のみ、後処理は外注 |
形態 | 筐体あり | 筐体無し | Prusaは造形中の環境を安定させるには別途囲いが必要 |
Prusaはとにかく場所を取るのが難点で、家のスペースに余裕が無いと厳しいかもしれません。
Adventurer3Xは純正スプールを内蔵できる構造になっていますので、とにかくコンパクトです。造形エリアが筐体に収まっているので造形中の環境も安定するし音も静かです。
拘るなら社外フィラメント+防湿ボックスが必要になりますが、それでもPrusaよりはコンパクト。
造形ピッチとかは特に気にしていないので無視しています。
フィギュアとかを作るなら気にした方が良いのかもしれませんが、それよりも各軸の位置決め精度が大事なんじゃないのという気がします。滅多にカタログには記載されないですが。
注文した
注文→届かない
Amazonでも買えますが、ちょうど製品自体がMK3S→MK3S+にマイナーアップデートされたところで、当分は本家から買わないとそれが反映されない様子だったので、本家から購入しました。
shop.prusa3d.com
納期は3~4週間とありましたが、5週間が過ぎても発送すらされず、6、7週目にチャットで問い合わせたところ大丈夫との一点張り。
そう言われたら信じるしかないですし、国内通販と同じ質を求めるのはナンセンスと思いつつも、やはり発送テーブルにも僕と同時期の注文は発送完了と出ている。
結局チャットではなく問い合わせフォームからメッセージを送った所、注文処理系でエラーがあったらしく、その場で発送手続きをやり直してくれました。
これについては、僕も別の注文(予備部品やフィラメント)を注文したりキャンセルしたりしていて、一緒に発送しようとしてくれたりしているうちにおかしくなったのだろうと思います。
何もなければ、普通に予告通り発送されると思います。発送されてから届くまでは5日間くらいです。
到着→組み立て
一抱えくらいのそこそこサイズがある箱で届きます。
ちなみに組み立て品と完成品が選べますが、自分は組み立てという行為自体も面白いだろうと思って組み立て品にしました。
一応、後でアップグレードや不具合対応するときに構造に詳しくなれるというメリットもあるようです。
ただ、250ドル払えば完組品が届き、かなり(普通は8時間くらい?)組み立て時間を節約できるので、懐具合に余裕がある人には悪くない投資だと思います。
この後は組み立てに夢中になって写真を撮り忘れているのですが、組み立てていて気付いたところとしては、以下あたりでしょうか。
3Dプリンタの部品を3Dプリントしている!
ちょっとしたスペーサとかではなく、割と込み入った部品(エクストルーダのケーシングとか)も3Dプリンタで作った部品が入っています。
この機種がRepRapという、「構成部品の大部分をその機械自身によって製造可能な3Dプリンタを作るプロジェクト」で開発されたものであることによるようです。
reprap.org
金属部品は各軸のシャフト、ベアリング、駆動モータ、全体構造フレーム、配線材料、ホットエンドくらい。大部分とは言い難いかもしれませんが、摺動せず、電気を通す必要がなく、大きな力と熱がかからないところは全て3Dプリンタ製です。
細かい寸法誤差はキャリブレーションで吸収できるから問題ないということなのでしょう。コストをかける場所とかけない場所のメリハリがしっかりしているとでも言うのでしょうか。
RepRapコンセプトさえ無視すれば、かなり数が売れていると思うので射出成型やプレスでもペイするのでは、とも思いましたが、割と頻繁にアップグレードがある(今3.5世代目)のでそれに対応しやすいのと、古典的(?)な製法だと形状自由度が低いため部品点数が増えてしまうのかも。
各軸駆動用のタイミングベルトを留めておく部品とか、前述のエクストルーダのケーシングとかは、3Dプリント以外の方法で一体成型は難しそうでした。
写真を撮り忘れたのでそれぞれ通販サイト(左)、(右)より引用
当然これらの部品は、Prusaで作られています(何百万、何千万のハイエンド機種で作られたわけではない)。
(特に安価なFDM式の)3Dプリンタのお手本のような使い方なのだろうと思います。
あとは気付いたこと何点か。
ネジロック剤かグリスか塗らなくていいの?
サイクリングにはまっていた時は、齧り付き防止のためにボルトにグリスを塗るのがお決まりでした。アルミのフレームにステンのネジを締めて、それで雨に濡らしたりする割にメンテのために取り外す用事も多い・・・あたりが理由だと思います。
一方、一般的な機械、特に3Dプリンタだと始終振動に曝されるわけで、むしろネジロック剤とかで固めてしまいたいような気もする。
結局迷いましたが、グリスの方を選択しました。公式が求めていないということは少なくともネジロック剤は要らないのだろうなと。冷静になってみるとグリスも不要だった気がします。
むしろグリスをちゃんとしたものを選ばないと樹脂を痛めそうです。僕は自転車用のグリスを使っているので、本来は金属 - 金属用のもので、多分樹脂に使うならシリコーングリスが良かったのだろうと思います。
素人が半端にグリスなんか塗るものじゃないですね。
座金入れなくていいの?
1点目の気付き点とも被るのですが、おそらくステン製と思われるボルトの座面が、大抵はアルミ製、そして結構な割合で3Dプリンタ製の樹脂部品です。
締め込んでいく過程で部材を壊しやしないかと少し怖いです。
ただ、こちらも結局面倒になって座金は入れませんでした。
溝にナットを埋め込む・・・みたいな工程が沢山あって、そういう場合はそもそもワッシャを入れられないからというのもありますが、それ以外の場所は入れればよかったかもしれないです。
事実、何点か樹脂部品の座面が負けています。
また、普通のメートルネジ(セルフタップでない)を、タップを切ってない3Dプリンタ製樹脂部品に無理やりねじ込む工程があります。強度とか大丈夫なのかハラハラします。
完成 → テスト印刷
なんとか組みあがりました。組み立て所要時間は10時間くらい。
テスト印刷として、自分がよくやっている20×20×10mmの直方体を印刷してみました。使用フィラメントは別の所要で間に合わせで買ったSUNLUのPETG(黒)です。
ものすごいイボのようなものが出来ていました。あとで見直したら、リトラクション設定の「追加の戻り距離」が2mmになっていて、リトラクションが起こるごとにかなり余計なフィラメントを繰り出していました。
こちらを0にするか、フィラメントのカスれが気になる場合は0.05とかにすることで造形が綺麗になりました。
造船の結果はこちらです。
こちらも綺麗にできました。積層痕や細かい糸引きはありますが、僕はフィギュアとかよりもロボットの構造部品を作るのが主要用途のため特に気になりません。
さすがに煙突は力を込めたら折れましたが、船上構造物の部分は僕の力ではどうやってももげないんで、層間接着も十分かなと思います。
PETGにしては珍しくたまに造形物が反ってしまう現象に見舞われていますが、後日、ポリカーボネート印刷にチャレンジしていた際、Z方向(鉛直方向)の調整が詰まっていなかったようで、おそらくそれを反映すれば改善すると思います。
後で別のベンチマークも試してみようと思います。
まとめ
総評
まだこれを使ってロボットは作っていませんが、Adventurer3Xでは失敗していたポリカーボネートの印刷も上手くいきそう(別記事で書きます)だし、良い買い物をしたと思います。
僕は自分のモノづくり能力に全く自信が無いので、自分で組み立てた3Dプリンタが動くなんて全く信じられませんでしたし、最初に作った直方体がイボだらけなのを見て、こりゃ10万円どぶに捨てたかなと思いましたが、すぐ改善してよかったです。
難点
人によって何が難点かというのは変わると思いますが、僕の場合は
- 自分で組み立てていることによる信頼性の低さ(造形失敗なら許せるが、火事とかにならないか?)
- オープン型であるがための造形中雰囲気温度の不安定さ
- サイズが大きい(上記2点に対処した結果というところもある)
- 音がうるさい
1点目、個々のパーツはきちんとした製品なのでしょうが、配線周りの組立が甘くて火花を散らすとか、ヒートブロックやヒートベッドの異常発熱で火事になったりはしないかと少し心配です。
自分は都合上クローゼットの中に設置しているので、以下で対処しました。
2点目はよくある悩みで、囲い(エンクロージャ、enclosure)を付けて解決することが多いですね。1点目の難点に対処したい理由もあって、僕も導入しました。
3Dプリンタでも有名なcrealiy製のものを導入しています(実際にはアリエクで購入)
3D Printer Enclosure: Safe, Quick and Easy installationwww.creality3dofficial.com
高さ方向にかなり寸法余裕があり、クローゼットの段に収まらないため、内部の支柱は底面以外取り払って使っています。
3点目は、元の機体のサイズ由来でもあり、囲いを付けたことにもよりますが、Adventurer3X時代は本体とフィラメント防湿ボックス合わせてクローゼット内の1段を占有するだけで済んでいたのですが、今回は本体で1段丸々占有し、フィラメント防湿ボックスのためにもう1段(のうち半分)を占有する状態になりました。
4点目は自分の組立が下手だったのかもしれませんが、各軸の駆動音がAdventurer3Xに比べると結構大きいです。
僕の場合は囲いに入れ、さらにクローゼットに入れ、そのクローゼットも自宅の居間や寝室から離れているので特に気になりませんが、ワンルームアパートとかだと気になる人は気になるかも。
一番うるさいのはZ軸(鉛直軸)ですが、一番動く頻度が少ない軸なのでよかったです。ここだけベルト駆動でなくボールねじ駆動なので、その影響があるのかも。