今回は機体の推力と重量を見積もって、そもそも宙に浮いていられそうか確認します。
キットなので基本は問題ないのでしょうが、色々と自己流の要素が入るので、重量が嵩みそうです。
前回記事です。
ktd-prototype.hatenablog.com
推力の計算
この構成で大体どの程度の機体重量が許容されるのかと、まずは推力の計算をしてみます。
参考になりそうなサイト、論文
いくつかのサイトや論文を見てみました。
- ドローン用プロペラの推力計算!(静止推力) - NOBのArduino日記!
- モーターの推力計算
- 静止推力計算 | TAJISOFT
- Static Thrust Calculator - STRC
- (PDF) Theoretical development and study of takeoff constraint thrust equation for a drone
- (PDF) Analysis Thrust for Different Kind of Propellers
趣味人のブログや学生の学会発表が主です。このレベルになると書籍とかで公式が書いてありそうなものですが、パッとは見つかりませんでした。
今回のケースでの推力見積もり
webサイト1〜4は全て同じ式を使っているのだと思います。
webサイト2を参考にローター定数kを23、負荷時回転数を無負荷時の6割として計算すると、1発あたり200g、4発で800gのものを宙に浮かせていられそうです。
電圧は3セルのリポを想定し11.1Vとしました。
ちなみに、プロペラ軸間対角距離250mmのドローンには最大で6インチのプロペラを搭載できるのですが、その場合の推力は340gf/発、4発で1360gfとなります。
不採用とした事例
5, 6は論文っぽくてなんか権威を感じるのですが・・・不採用としました。
5は一部の値の計算方法が不明瞭でよくわかりません。
propeller constantという値がプロペラピッチをプロペラ半径で割ることで得られるとあるのですが、論文中で実際の計算に使っている値が全然違います。
また、power factorという数字の意味が自分には理解できませんでした。
最終的な計算式は式(16)になるのですが、次元も合っていない気がしますし・・・
ちなみに、これは単なるミスだと思いますが、式(16)中でプロペラ回転数が出てきますが、実際の計算ではその1000分の1の値を使うことになっています。
6は最終的な実験データの値の多寡が自分の大小感覚と合いません。
今回僕が使う予定のプロペラに一番近いものは外径6インチ、ピッチ4インチの3枚羽プロペラですが、電圧14.8V、今回使用するのより大きな2212型のモータを使って、最大推力1.3N(≒130gf)というのは、先程の計算結果と比べてもちょっと小さすぎます。
何か実験条件が違うのかとも思いましたが、斜め読みでは判別できませんでした。
一方で、他のデータを見るとそれほどおかしくないような気もしてきます。
たとえば有名なDJIのPhantom4は、どうやら9.4インチ✕5.5インチのプロペラを使っているようですが、公称の最大離陸重量は1500gとされています。
DJI 機体重量と最大離陸重量
この論文のデータだと外径10インチ、ピッチ6インチのデータが近いでしょうか。最大出力6N、4発で約2.4kg分の推力です。プロペラが一回り小さく、安全余裕も加味していると思えば、妥当か、むしろ大きいくらいです。
逆に、論文中の外径13インチ✕ピッチ4.5インチの最大推力7Nは、もうちょっと出せるのでは?とも思えます。ただ、このサイズになると今度はモーターが小さすぎるかもしれませんね。
ただ、この論文では2枚羽のプロペラと3枚羽のプロペラの推力を比較して、推力は変わらないという結論を出しているんですね。
後述するキット外のプロペラ調達の際に参考にしようと思います。
ちなみに
以下の本(絶版?)を持っているのですが、プロペラの推力計算は載っていないようでした。第2版が出ているようなので、そっちには載ってるかも?
楽天ブックス: ドローンを作ろう!飛ばそう! - 高橋隆雄 - 9784798044705 : 本
重量の見積もり
・・・の前に一部部品の選定を済ませます。
バッテリ選定
プロペラ軸間距離250mmのドローンだと、バッテリは2セルか3セルが一般的でしょうか。
今回は、自動飛行用にペイロードが必要なこと、ある程度大きなバッテリを積んで充電頻度を減らしたいのと、単に手持ちのバッテリを使いたいため、11.1V, 3300mAhのリポバッテリを使います。
重さは大体250gです。
プロペラの選定
大きめのバッテリにシングルボードコンピュータ、カメラも載せないといけないため、最大推力800gfというのは少し不安です。
というわけでプロペラは6インチのものに換装することにしました(中々見つからず難儀しました)
jp.banggood.com
ここで買っても良かったかも知れません。
www.rc-airstage.com
ESCの選定
先述のとおりキットのESCは最大出力が12Aとなっていますが、11.1Vのバッテリで6インチのプロペラを回すというのは、ちょっと想定外なのではないかという懸念があります。
電圧が高いし、プロペラが大きくなる分トルクも上がるだろうし。
というわけで、例の5年前に買ったキットから最大出力30AのESCを引っ張り出してきました。メーカーは同じSimonkというところです。
基本部品の重量見積もり
以上の部品選定結果を元に重量見積もりをしていきます。
部品名 | 重量(g) | 備考 |
フレーム | 100 | 一部のネジや追加プレートを省略 |
バッテリ | 240 | 3セル3300mAh |
モーター | 102 | 4個分 |
ESC | 100 | 4個分、最大30Aのものに換装 |
回路回り | 60 | Arduino Micro, IMU, フルカラーLED, 配線材料あたり? |
プロペラ | 20 | 外径6インチ3枚羽4個 |
スキッド(脚) | 16 | 1セット4本、3Dプリンタで出力 |
プロペラガード | 28 | 1セット4個、3Dプリンタで出力 |
コネクタ類 | 50 | 各端子の弾丸コネクタ、XT60コネクタなど |
合計 | 716 | これに加えてセンサを載せる |
プロペラを外径5インチのものにすると、ESCとプロペラで50g程度軽くなりますが、それでもペイロードは150gくらいとなりちょっと心許ないですね。
プロペラを6インチとしたことで最大推力が1300gf以上になりますから、多少余裕を見ても500gくらい何かを積めそうです。
追加ペイロードの重量見積もり
追加のセンサやコンピュータなどの重量を見積もります。基本的な回路は機体の方に含めたほうが良かったかも知れません。
部品名 | 重量(g) | 備考 |
Jetson Nano | 140 | Raspberry Piなら半分の重さ |
Realsense T265 | 60 | D435iだと75gくらい |
ケーブルなど | 50 | USBケーブル✕2、その他 |
合計 | 250 | 総機体重量は1kgくらい? |
そうは言ってもあれもこれもというわけには行かないので、マシンパワーの都合も考えるとこんなところでしょうか。
Jetsonを裸で使うのは少し不安ですが・・・RealsenseT265しか使わないのであれば、ラズパイでも良いかも知れません。その分軽くなるので長く飛べるし、その分をケースに回しても良さそうです。
まとめ
とりあえず、キットの一部部品を換装すれば、重すぎてそもそも宙に浮けない、という自体は避けられそうです。
次はモータを回したりしてみようと思います。