Maker Faire Kyoto 2020は残念ながら昨今の情勢に鑑みTwitterでのオンライン展示という形を取ることになりました。
が、おかげで初めてMaker Faireというものに出展できたので、まあそこだけは良かったかなと思います。
作品を発表すること自体が初めてでしたかね。まあ普段Twitterやブログで書いているだろうというのはありますが。
何を出したのか
出展当時の形態
1本目
自律ローバーを作って、簡単な家事をさせたり移動式スマートリモコンに仕立てようとしています。その中間成果となりますが、ROSを使った自律走行・遠隔操縦実験が可能なロボット台車として公開します。https://t.co/2WihlBbLdU 細部はgithubまたは次のツイートにて。#MFKyoto2020#作品発表 pic.twitter.com/ZdqdMLSUBf
— りんごろう@自律ローバー作り (@KtdPrototype) 2020年5月2日
2本目
動画youtube版 → https://t.co/3wv4g7hitU
— りんごろう@自律ローバー作り (@KtdPrototype) 2020年5月2日
普段はルンバサイズで屋内でも気軽に扱えますが、部品を組み付けを変えることで車幅を広げ、野外での走破性が向上する所が気に入っています。#MFKyoto2020#作品発表 pic.twitter.com/Bef4x47Q8t
出展形態について
一度話を展示会全体の方に持っていきますと、今回はMaker Faire側の統制により、作品ジャンルごとに時間を区切り、ハッシュタグ(#MFKyoto2020、#作品発表)をつけてツイートするだけ、という非常に簡単で、間口の広い形態でした。
もちろん本来意図した形態で開催できなかったことは残念ですし、本来の形態のために準備をされておられた方や、そもそもこの情勢で苦しんでいる方が大勢おられるのは重々承知ですが、これはこれで良い部分もあったのかなと思っています。
科学・技術に限ったことではないかもしれませんが、
科学・技術の発展にもっとも重要なのは文字通り「工数」であり、すなわち「人数×時間」であるというのが最近の持論です。
(少々話が逸れますが)
予算不足が嘆かれる時代になって随分立つような気がしましたが、予算は人数と時間を割くための手段と言っても過言ではありません。金が無いのに時間だけ過ぎたら、文字通り人が死んでしまうので。
もっと言えば、予算はそれなりにあるのです。ただ、人数と時間を割けるような形態になっていない。
数字(金額)だけ積み上げれば、一瞬で物が完成する、科学・技術が進展すると思っている節がどこかにある。
極端な話、毎年の科学技術関連の国家予算が3兆円(これ自体もそれほど悪くない額)として、来年は30兆円にしたら、科学・技術が10年分進展すると思っている人が結構居る。
実際は多分1.5年分くらいしか進みませんよ多分。30兆円を消費する人を集めなきゃいけないし、その人たちだっていきなり成果出せるわけじゃない。しかも使いきれなかったら回収される可能性すらある。
もちろん、多いに越したことはないですし、その投資は必ず将来実を結ぶとは思いますけどね。
(閑話休題)
産業としての物作りと、メイカー的な文脈での物作りの間には、結構な隔たりがあると思っていますが、一方で完全に別物でもありません。
メイカーフェアのようなイベントを通じて、「物作りとは具体的にどういう物なのか、作ろうとすると、作り始めると、作り終えると、何が起こるのか」を色んな人が体感するというのは、上記の「人数×時間」のうち、人数 を増やすことに大きな意義があると思うのです。
必ず間口が、裾野が、広がることに繋がり、それは必ず科学・技術、あるいは製造業等の基盤維持に役立つのではと考えています。
そういう意味では、普段の会場の熱気(Maker Faire Tokyoしか行ったことないですが)という大きな代償は払ったものの、今回のように色んな人が気軽に出展・閲覧可能な展示も、それはそれでメリットがあったのではないかなと思います。
作品について
再び自分の出展物の話です。
作品の趣旨
ベースとなっているのは、普段このブログでも書いている自律ローバープロジェクトです。
というか、それしか出せるものがありませんでした。
そして、まだ自律走行はしていないので、自律走行ローバーとして出してもアピールポイントに欠ける恐れがある。
そこで、自律ローバープロジェクトの中間成果という位置づけで、ROSの勉強用、あるいは自律走行の研究に活用可能な実験用プラットフォームとして展示しました。
自律走行の実験をしたい人にとっては、台車そのものの製造は必ずしも興味対象ではなく、市販の台車を活用することが多いのではないかと思います。
用途ごとに色んなものが売られていて、有名なところだとNVIDIAが出しているJetBotやRobotisのTurtlebot、本格的なものだとマクニカ社のものとか、ClearPathRobotics社のものとかが挙げられます。
NVIDIA JetBot パートナーの AI ロボット キット - NVIDIA
PLATFORM - TurtleBot 3 - ROBOTIS
自動運転実証車両 - 自動走行ソリューション - マクニカ
Warthog Unmanned Ground Vehicle Robot - Clearpath
ここからは作品を正当化するためのポジショントークですが、小さすぎて拡張性が低いか、大きくて高価すぎるか、結構両極端な気がしてならないのです。
小型のものは、色々なセンサを載せてバリバリ走らせたい人には物足りないですし、逆に大型のものは大学の有名ラボや大企業でも購入を躊躇するサイズと価格帯。
その中間を埋めるために、この台車はどうでしょうか、というものでした。
作品の特徴
入手性、価格、性能のバランスが良いものをなるべく選んだつもりです。
全て買い揃えても4万円程度(3Dプリントを外注したら5〜6万円?)。
趣味で扱うのに安いとは言い難いですが・・・
コンパクトに収めればルンバ等のロボット掃除機と同じ床面専有面積で、屋内でもある程度気軽に動かせます。一方でこちらの記事にも書きましたが、ホイールブラケット等を付け替えることでホイールベースやトレッド幅を嵩上げして野外仕様にもできる。
(後述の欠点はありますが)ハイパワーモータと大径ホイールで悪路もなんのそのです。
アルミフレームを使っていますので、何か追加したい部品があったら、フレームをどんどん継ぎ足して追加搭載ができます。
ROSとArduinoを使っているので、ソフトの方も改変・追加が簡単です。
反省点など
作品自体のレベルは、実力なので嘆いても仕方ないとして置いておきます。
もうちょっと、本当に誰でもすぐ使えるレベルまで整備してから出したかったですけどね。マニュアルとか整備したり。
ちょっと変則的な安全機構を入れてしまったりしています。多分、ROSメッセージでTwist型の/cmd_velを入れれば動くはずですが・・・そもそもそれをそうと言い切れるくらい、シンプルにした方が、実験用台車としては良かったのかなと。
後は展示としての内容ですが、一本目のツイートで動画をベタ貼りしたのですが、サムネにロボット本体が映っていないのは失敗だったなあと思います。目を惹かない。
後は別に反省点ではないですが、「実験用プラットフォーム」という時点で結構マニア向けですね。あまりMaker Faireの趣旨に合っていないのではとちょっと不安です。
自分の興味・嗜好がそちらなので仕方ないですが、色んな人に楽しんでもらえるものも作ってみたい気持ちもゼロではありません。
裏話(?)的な
この台車の名前は
open ABC rover
と言います。
止せばいいのに、展示用にロゴまで作ってしまいましたw
openはオープンソースだからオープンです。
ABCは、Attendant、Buddy、Cooperation(付き添い、相棒、協力)の頭文字であり、「基礎」を表す(いろは、とおなじ)ABCであり、ダブルミーニングとなっています。
元々自律走行台車を作り始めたのが、家の中で食器を運んだり、消し忘れた隣の部屋のエアコンを消してきたり、そういった自分の相棒的なロボットが欲しかったというのがあり、一方でロボット自体は基礎から学ぶ必要があり・・・という自分の希望とジレンマを込めて、上記のABCが浮かびました。
こういう頭文字を取って意味のあるワードにするみたいな名前の付け方は海外(特にアメリカ軍?)の研究開発プロジェクトでよくある手法で、それを真似ました(ちょっとだけミリオタ入っているので)
ネーミングが海外仕様だったので、売り文句とかもなんとなく頭の中で英語のフレーズばかり浮かんできたので、チラシは英語版も作ってしまいました。
別に英語母語話者とか、海外在住とかではないです。バリバリの日本人です。
その他の反省点としては・・・
車輪のグリップが足りませんでした。
動輪の表面は硬めのポリウレタンで、悪くはないと思うのですが、車重の割に接地面積が少ないのか、きちんと段差に食いついてくれないんですよね。
モーターパワーは十分だと思うのですが、車輪が空転してしまい、意外と上の動画にあるような森の中ではスムーズに走りませんでした。
ソースコード、詳細説明文など
githubにあります。
github.com