カエデ自動機械

ちょっとしたものづくりや電子工作のメモなど。技術開発とは今は呼べないかな。

倒立振子ロボット ver2を作る(1)-部品選定と車体再構成

今まで倒立振子ロボット ver1を作ってきて、一応安定して倒立するロボットが完成したものの、拡張性の問題から一度作り変える必要があるという結論に至ったところでした。
倒立振子ロボットを作る(仮終)-まとめと課題 - 技術開発日記 atKTD
主に設計変更が必要ではと睨んでいたのはモータ(の最大回転数)でしたので、ここに着目して作り変えていきます。

モータに求められる性能

動力性能

回転数について前回整理したところでは、今まで使っていたモータの最大回転速度が46[rpm]、一方巷でペイロードや不整地走破性に優れた倒立振子ロボットはというと、概ね300[rpm]以上なのではないか?という話でした。


一方トルクについて、元々は倒立振子ロボット ver1の設計においてモータトルクは 3.18[N・m]必要という結論から、それを満たす品として近藤科学のサーボモータを使っていたところでした。

この品も大概高価ですが、同じトルクで回転数だけ増えたモータは更に高価なものになるでしょう。

前のモータすら頭が狂っていた時に買った品で、新たに同レベルのモータを買うのは少しきつい。


従って、トルクについてはある程度目をつむり、他の事例で使われているモータと同レベル、高々1[N・m]程度を狙っていくことにします。

大きな段差を乗り越えるトルクというのは確かに魅力的ですが、冷静に考えてみると姿勢制御が困難になりそうで、トルクの最大値だけが大きくても意味がありませんので・・・

それ以外に

そして動力性能以外に忘れてはならないのが、エンコーダ等の周辺機器です。設計プロセスが雑なのと、使用したモータに既に組み込まれていたので気にしておりませんでしたが、モータの回転角度を検出するエンコーダが必要となります。

ただ倒立振子を立たせるだけなら必ずしも必要ではないのですが、自律走行をするには必須ですし、単なる遠隔操縦にしても、最大速度にリミットをかけたりと少しでも高級な制御を入れるとなると、なんらかの手段でモータの回転量や回転速度を検出する必要に駆られます。

その点にも注意してモータを選んでいきます。


結局どんなモータを選んだか

他事例でも使用実績が多く、国内でも通販可能なpololu社のモータなんかを第一候補としていたのですが、いざそれを通販サイトで買う段になって、ServoCityという会社を見つけました。

見つけたのはロボショップの通販サイトで、これをそのまま買っても良いのですが、本家サイトを見るとより回転数、トルクともに大きなモータがセール中で、1個10ドルで購入可能とわかり、こちらを購入しました。
www.servocity.com

この手のモータは、出力軸断面がD型になっていて、ホイールを取り付けるためのハブをイモネジで留めるようになっていることが多いのですが、Servocityのハブはクランプ型になっているのも地味に高ポイントでした。

使い方が悪いのかも知れませんが、イモネジ式はがたつきが大きく緩みやすい気がしていたので。
www.servocity.com

予備を含め3セットずつで合計約50ドル、日本への送料60ドルの合計110ドルと決して安くはありませんでしたが、このスペックであれば妥当な価格かと思います。

ちなみに換装前後のモータ総合スペックですが、以下のように推定しており、ロボットの重量は増すものの地上ロボットであれば純粋な出力増がメリットになるだろうと(感覚ですが)考えています。

  • 以前のモータは推定出力3.5[W]程度、質量100[g](最大回転数46rpmは精々0.7[N・m](停動トルクの1割)の時しか出ないという仮定)
  • 新しいモータは推定出力12[W]程度、質量330[g](計算根拠同上)

モータドライバの選定

選定したモータのストール電流が約20Aですので、真面目にやるなら相当な大出力対応モータドライバが必要になります。

ServoCityのモータドライバは高価な品が多く、手が出ない感じがしましたので、今度こそ国内通販も可能なpololu社のVNH5019というモータドライバとしました。
www.pololu.com


その他の部品

ホイールはver1でも使っていた部品を使用します。
ハブとホイールを接続する部品、モータとロボットを接続する部品は3Dプリンタで新たに出力することにしました。

f:id:ktd-prototype:20190827123655j:plain
届いた部品と3Dプリントした周辺部品

ちなみに、ホイールやロボットの部材までServoCityの部品で統一すると、今回は3Dプリントとした部品も含め、全て同社の品が使用可能になります。(同社がActoboticsと呼ぶ寸法規格で統一されるため)


車体の再構成

前述の部品を出力する前の話ではありますが、モータ変更に伴い車体構成も変更します。
といっても大した変更ではなく、モータの全長が長くなりますのでその分車幅を長く取るようにしました。

f:id:ktd-prototype:20190828211017p:plain
再構成した車体全体のイメージ図(向かって左車輪のみ非表示)

ちなみに

  • 青い部品:makeblockの構造部材
  • 白銀の部品:今回買ったモータ
  • 黒い部品:前回選定した車輪
  • 銀色の部品:バッテリを想定したダミーウエイト
  • 黄色の部品:3Dプリンタで作る予定のモータマウント、ホイールマウント、回路マウント用の各部品

です。

私がよく使っているmakeblockの製品ですが、手元のストックだと同じ寸法の梁が二本ずつしか無いため、ペイロードを増やしていく際にどうやって搭載スペースを用意するかは少し悩みどころです・・・

まとめ

改良型の倒立振子を作るにあたって、モータ等の基本部品の再選定を行い、それをベースに車体の構成を検討しました。
次回はモータの回転、エンコーダ情報の取得等、基本的な車体駆動の部分を作っていきます。
ktd-prototype.hatenablog.com